今井先生VS刈部さん

相田歯科クリニックには相田耳鼻咽喉科も併設され、「あいうべ体操」でおなじみの今井先生が、月一回はるばる九州からやってきます。

「どうして歯医者さんと一緒に耳鼻科まであるの??」

その秘密に迫るべく、お二人のインタビューを敢行いたしました。

今井先生はどうして相田歯科耳鼻科で診察を始めたんですか?

【今井】
相田先生が相田歯科耳鼻科をオープンする際、高―い内視鏡を買ったんですよ。
内視鏡なんて、歯科じゃ役に立たないじゃないですか。(笑)
そんな心意気を感じて「じゃあ一肌脱ごうか」というのが始まりです。

どうして今井先生を相田歯科に呼ぼうと思ったんですか?

【刈部】
今井先生が来る前は普通に虫歯の治療ばかりしている、普通の歯医者でした。
その頃、歯の治療、痛いのを取るをやめたいという思っていました・・・今以上に混んでいて1日70人くらいただひたすら虫歯の治療・・・虫歯のない状態を作りたかかったんですね。

実は、今井先生に会う直前に相田先生は「脳」について研究を始めてたんです・・・脳の中の「海馬(かいば:記憶力に関係する脳の部分)」の発達が噛み合わせに関係があるんじゃないか?と。
矯正をした子の海馬のMRIを撮ったりして。

色々調べていた資料の中に「口呼吸」というのがあって、今井先生の名前を知って、そこからなんです。
そのとき、今井先生の口呼吸の話を聞いてピンと来たんです。

自分はアトピーがあって悩んでいたけど、口呼吸をやめたらよくなったので腑に落ちたんです。
今井先生のDVDを見たとき「口を閉じるだけで他の病気が治るんだよ」というのは衝撃的でした。
自分のアトピーが「自己免疫疾患」だという事をはじめて知ったんです。

自分は薬に頼ってきたけど、それだけじゃないとみんなに気付いてほしい、同じ思いをしている人に知ってほしいと思いました。
とにかく、今井先生のDVDを見て「先生をココに招待したい!」と思ったのが最初です。

【今井】
最初は、(相田歯科を)普通の歯科の一つにしか思ってなかったけど、内視鏡を入れたという話を聞いて、先生の思いとか技術を伝えなければならない、その拠点をどこかに、と思っていたんです。
そして、相田先生は大事にしてくださる・・・例えば、ビジネス的に大事にしてくれるとは違う感があったんですね。

【刈部】
今井先生が来てから、他のスタッフも口呼吸のことを患者さんに説明できるようになりました。スタッフも「治る」という過程が面白くなってきて・・・腑に落ちているんでしょうね。
今井先生が何を考えているか瞬時に判断できると思っています。

【今井】
刈部さんは、セミナーに参加してよく勉強しているので信頼できます。
9割方仕上げておくからあと、あと1割の説明はお願いしますということを刈部さんなら安心してできます。

(刈部さんが)去年具合が悪くなったのはどう見てます?

【今井】
自己犠牲をしすぎたのでしょう。
女性だから自分を押し殺してというところは多かれ少なかれあると思いますからね。
それをどっか発散しないと身体に出るしかない、その集大成が起こったんだと思います。

【刈部】
(笑)、最初に今井先生から聞いたのは「人のためは偽善」だという事です。
私はその言葉を聞いても、自分のためには生きられません。

仕事をする意味は、一緒に働いている人が楽に働ける環境を作ることだと思って働いているから、人のためにしか動けないんです。

【今井】
だから病気になる。
だって本来は、他人も大事だけど自分も大事なんです。
他人と自分を同等に扱わないといけないのに、自分を下に置いちゃう。
自分が元気でないと、他人の事が出来ないです。

他人のためにするべきは、自分が元気でいることなんですよ。
自分はさておいて他人の事をしちゃうから、自分の元気が削がれていくんですよ。
「他人のために」という言葉でごまかす、それは自分自身を振り返りたくない気持ちがある。
自分が元気じゃないと他の人にもっと大変になるから、自分が元気でいないといけない。

それは性分なんでしょうか?

【今井】
自分を上に置かなくていいから、自分をものすごく大切にしなくてもいいから、他の人と同じように自分の心も身体も大切に扱ってほしいですね。
でもそれをせずに他人の方に行っちゃう・・・女性に多いです、自分より他人が大事になっちゃう人。

【刈部】
確かに、この仕事をしてなかったら、自分が今井先生の患者になっちゃうと感じます。
歯は体の一部ですが、耳鼻科は全身も診るんですね。耳鼻科開設当初、具合が悪い人が多く、受け取る力が当時の自分にはなかったんです。

【今井】
医療者がみんな通る道ですね。最初リウマチの治療をし始めたときに「患者さんの痛みが分かったらいいな」と思ったけど、痛みが分かったら大変です、患者さんの全部を背負う必要はないんですね、患者さんのためにも。

今井先生は、刈部マキに今後どうなってほしいですか?

【今井】
やっぱり、自分をケアしてほしいです。
特にリウマチの方に言うのは「他人を慮るように、自分の事を慮ることをしてほしい」と。
「自分自身を大切にすることで、他の人ももっと大切にできるようになったのよ」というストーリーになればいいなと思っています。

刈部さんから今井先生へのリクエストありますか?

【刈部】
先生が毎回東京に来るたび、勉強をさせてもらっています。
朝来ると「刈部さん、こんなことが分かったんだよ!」とすぐ新しいことを言ってくれるんですね、ありがたいんです。
最近、講演を聞いてないですけど、新しい情報を結構知っているのかなと。(笑)

【今井】
人に言う事で自分自身の知識も定着するし、言う人がいるのはありがたい、喜んでもらえるのもありがたいですね。

歯科治療ってこういう風に変わっていってほしいというのはありますか?

【今井】
歯科衛生士さんなど歯科の人たちと話をしていて思うのは、「歯が大事」って言いすぎです。
歯だけ治ればいいのか? と思います。

僕ら内科医は治らない病気の方がずっと多いんです、外来が終わった後は無力感を感じるんです、「今日も治せない人がいっぱいいた」って。
口も身体に影響を与えます、身体も口に影響を与えます、「どっちかが大事」なのではなくて「どちらも大事」なんです。
ここ何年間で世の中も変わりましたね、医科歯科連携が進んできています。

「病巣疾患」という概念も少しずつですが広がってきています。日本病巣疾患研究会も立ち上げましたし。

【刈部】
病巣疾患研究会の場にいることが自分の中でとても幸せです。
私の一年は、病巣疾患研究会の総会が終わったのが一年の終わりなんです。
そこからまた一年が始まると毎年思っています。

遠くから来てくださる先生もいらして、そのイキイキとした表情を見るのが本当にうれしい。
歯科の人間は歯科以外の先生に会う場がなかなかありません・・・内科、耳鼻科の先生と話が出来るだけでも幸せ感じます。

堀田先生(※1:堀田 修クリニック) 田中先生(※2田中耳鼻咽喉科)と関わるようになって、心配してくれる環境がありがたすぎちゃった。

【今井】
そう、だから、刈部さんは自分の体の声を聴く練習が必要です。
「寿司屋の女将さんの内訳話」という楽屋裏の話の本があるんです。
楽屋裏が一番面白い、賄いが旨いのと一緒。
歯科クリニックの楽屋裏での裏話、実は歯科で来たんだけど実は歯科とは関係ないこういう病気だったとかね。

相田先生と僕は、診療スタイルが似ているんです。
「口先」が大事で、そこから始まっていくんですね。
いっぱい話をする、そうなると言葉なら刈部さんでもできる。
「じゃあ苅部さん説明して」と、なるんです。

【刈部さん】
相田先生と私の2人で(相田歯科クリニック)をやっていた時代であるんです。
相田先生は、とにかく言葉巧みに説明するんです。
言葉なら私でもできるので「刈部さん説明して」ってなるんです。

患者さんの不満って、「説明してくれない」っていうのが一番多いんです。例えば、自分の子供が歯医者に1人で行った時にどんな治療をしたのか分からないのは、嫌じゃないですか。
とにかく、大人も子供も声を掛けることを多くしようと思ったんです。
なので、ここに来た患者さんには「この歯医者さんは説明してくれる」って言われます。
同じことを耳鼻科でもしています。

【インタビュー】2020/01/27

今井先生との話はここまでです。
後日、話足りなかったことを刈部さんが続編として喋ります。

~刈部さんトーク続き~

【今井先生と相田歯科 その1「メディカルペップトーク」って何??】

喋りが大事だという事は分かりました。そのツールとしてペップトークというのを導入しているとのことなのですが、それって何ですか??

【刈部】
知ったのは今井先生のセミナーです。
今井先生の当院での診療は月1回、ですので診療は5分診療です。

・・・短いですね。

短い診療時間でも患者さんとのコミュニケーションを通して理解してもらい、患者さんにフィードバックするか?短い時間でも大丈夫なように「ペップトーク」という理論があるんですね。

「Pep(ペップ)」には、元気・活気・活力という意味があります。
ペップトークはアメリカのスポーツ界では有名で、なでしこジャパンの監督や青山学院の原監督が用いています。「楽しんでこい!」って送り出すなど、声掛けの方法です。

ポイントは、肯定的な言葉を使う、否定的な言葉は使わないこと。
例えば、野球の試合で子供たちに言う場合「ココで撃たなきゃダメだよ」じゃなくて「君なら打てるよ!」という言葉に置き換えるんです。
それをメディカル業界に応用しようというのが今井先生の企みです。(笑)
今井先生は認定医で、2018年の年末から自分のクリニックで実践しています。

「エビデンスで学ぶメディカルペップトークセミナー」でも「日本初のペップトークドクターの今井です」と冠してますね。
精神科医で医学博士の最上悠先生の本に「ストレス発散に日記を3日間書くといい」と書いてあったんです。

親子関係がうまくいかなかった時、気持ちをリセットすることができました。
私の場合、父と介護の時にストレスが溜まって爆発したんですね。
母とケンカした夜に思いのたけを日記に書いて、明日の朝は普通にしようと思ったんです。
翌朝、母は嫌な顔してたんだけど「おはよう」と普通に言ったら普通に戻っていきました。

書くと気持ちが吐き出せる?

そうです。
マイナスを引きずるのではなく、プラスの事をなるべく考えていく…人間それが大事なんだなと。
介護でいじめるのは、イラつくからいじめてしまうんですね。
吐き出すところがあるのとないのとでは違うと思います。
50歳の子供が80歳の親に話をする…それが親子関係の修復の第一歩だと思います。
患者さんと医療従事者に置き換えるとこんな感じです。

まず医療従事者は聞く耳を持つ、何を聞いても否定しない。
例えば、歯磨きしてこない子に対して、どっちの声掛けがいいと思いますか?

×虫歯になっちゃうよ(脅し)
〇君ならできるよ(モチベーションを上げる)

否定はしない、緊張を解くためにリラックスするんです。
例えば、試験の時には「やれるよ」というんですね。
「がんばれ」でなく「やってきたことをやろうよ」と。
でもなかなか、自分の家族には言えないですよね。(笑)

矯正治療の際、「お母さん、家では矯正のこと、言わなくていいですよ。イヤになっちゃう原因の一つですから」と伝えることもあります。
子供と向き合う時「何で嫌なの?どれだった出来る?」と聞きます。
子供は「痛いから」といいます。
私も経験者なので「痛いのわかる」と。
今井先生曰く「ペップトークを知ってて使うのと知らないで使うのとじゃ違うでしょう?」と。

なるほど、今度の子供の野球の試合で使えます!

でもね、分かっているけど言っちゃうんですよね。
そんな時は、ちょっと間をおいて考えるといいです。
例えば、電話を保留にちょっと一息ついてから考える。
ペップトーク協会の岩﨑会長の話で「これから先のない人に対するペップトークありますか?」というのがあるんです。

知り合いでステージ4の肺がんになっちゃった人がいる。
治らないから諦めるのではなく、すべての物事にありがとう、髪が抜けても辛くてもありがとう、と。
そうしたら、余命1年が延びたそうです、体の治癒力も上がるんです。

私も介護した時に父が「お休み、ありがとう」って言ってくれたんです。
父はうまく喋れないけど何を言ってもありがとう、と。
危篤になったとき、兄が父に掛けたことが「ありがとう」、ありがとうと言ってくれた兄に母が「ありがとう」と・・・もう涙腺崩壊です。(笑)

「悲しいけれど後悔はない」その言葉によって救われたし、ペップトークを知らないでやっているのと知ってやっているのは違うと思いました。
渡哲也さんが亡くなった時に同じこと言っていて「あと何十年生きたいという悔いはあるけど、やりたいことやったから後悔はない。」ってね。

・・・いい話ですね。

家族の間でありがとうという言葉をかけるのは難しいけど、後悔をしないためには必要な言葉です。言葉って、とっても大事なんですね。


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